さて、記念すべき第1回目は年金の種類と公的年金制度の仕組みに触れながら、この春、新スタートをきる大学生からのご相談にお答えします。
平成12年3月に書かれたコラムです。現在の法律とは異なる場合があります。ご注意ください。
この春、大学を卒業してめでたく就職することになりました。就職先では厚生年金に加入することになるようですが、20歳から納めてきた国民年金の保険料は無効になってしまうのでしょうか。(女性、23歳)
まずは第1回目ですので、質問にお答えするまえに年金の種類についておさらいしておきましょう。
年金には、公的年金、企業年金、私的年金の3つがあります。
なかでも公的年金は老後や万一の備えの基礎となる重要な年金です。
今回の相談に登場する国民年金や厚生年金、そして、公務員に支給される共済年金はこの公的年金に含まれます。
企業年金は、企業が従業員の定年退職後の生活の支えとして準備する年金です。代表的なものとしては、厚生年金基金や適格退職年金などがあります。
私的年金は、生命保険会社の個人年金や養老年金などです。こちらは、みなさんご存じのように、多種多様な保険商品の中から自分の必要に応じたものを選択し加入することができます。これらの企業年金や私的年金は、基礎部分である公的年金に上乗せして老後や万一の備えを強化するためのものといえます。
種類 | 運営主体 | 代表的な年金 | 加入者 |
公的年金 | 政府(厚生省) | 国民年金 | 日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人 |
厚生年金 | サラリーマン、OL等 | ||
各種共済組合 | 共済年金 | 公務員 | |
企業年金 | 企業 | 厚生年金基金 適格退職年金 |
企業年金を運営している企業の従業員 |
私的年金 | 生命保険会社等 | 個人年金 養老年金 |
個人が自己選択、自己決定のうえ加入 |
さて、相談者の質問に戻りましょう。相談者は就職後、厚生年金に加入するわけですが、だからといって国民年金を辞めることにはなりません。
国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の人すべてが加入する年金であり、それらすべての人に基礎年金を支給することを目的としています。
一方、厚生年金は会社で働く人のために、厚生年金に加入していた期間分の年金を、また、共済年金は公務員に組合員期間分の年金を支給することを目的としています。
相談者のように20歳以上60歳未満で会社に勤務する人は、国民年金と厚生年金に同時に加入し、年金を受給するときには国民年金から支給される基礎年金と、それに上乗せして厚生年金から厚生年金に加入していた期間分の「報酬比例の年金」が支給されることになります。その際、相談者がこれまで納めていた保険料はちゃんと基礎年金に反映されますのでご安心ください。
公的年金のこのような仕組みは、国民年金を家の1階部分、厚生年金や共済年金を2階部分になぞらえて「2階建て年金」とよばれています。
公的年金が2階建てなら、企業年金は2階のうえのサンルーム。私的年金は、別荘といったところでしょう。
*この原稿は都市住宅新聞社刊「ぱりぶ21」に連載していたものに加筆して再編集したものです。
平成12年3月に書かれたコラムです。現在の法律とは異なる場合があります。ご注意ください。