前章「12.2つの老齢厚生年金」で説明したように老齢厚生年金の支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられたことの緩和措置として昭和16年4月2日~昭和36年4月1日以前生まれ(女子は昭和21年4月2日~昭和41年4月1日以前生まれ)で支給要件を満たす方には、特別支給の老齢厚生年金が支給されます。
<支給要件>
(1)60歳以上であること
(2)1年以上の(厚生年金の)被保険者期間を有すること
(3)老齢基礎年金の受給資格者期間を満たしていること
<支給開始年齢>
【男性】
生年月日 | 支給開始年齢 | ||
男性 | 女性 | 定額部分 | 報酬比例部分 |
昭和16年4月1日以前 | 昭和15年4月2日~昭和21年4月1日 | 60歳 | 60歳 |
昭和16年4月2日~昭和18年4月1日 | 昭和21年4月2日~昭和23年4月1日 | 61歳 | 60歳 |
昭和18年4月2日~昭和20年4月1日 | 昭和23年4月2日~昭和25年4月1日 | 62歳 | 60歳 |
昭和20年4月2日~昭和22年4月1日 | 昭和25年4月2日~昭和27年4月1日 | 63歳 | 60歳 |
昭和22年4月2日~昭和24年4月1日 | 昭和27年4月2日~昭和29年4月1日 | 64歳 | 60歳 |
昭和24年4月2日~昭和28年4月1日 | 昭和29年4月2日~昭和33年4月1日 | 65歳(基礎年金) | 60歳 |
昭和28年4月2日~昭和30年4月1日 | 昭和33年4月2日~昭和35年4月1日 | 65歳(基礎年金) | 61歳 |
昭和30年4月2日~昭和32年4月2日 | 昭和35年4月2日~昭和37年4月1日 | 65歳(基礎年金) | 62歳 |
昭和32年4月2日~昭和34年4月1日 | 昭和37年4月2日~昭和39年4月1日 | 65歳(基礎年金) | 63歳 |
昭和34年4月2日~昭和36年4月1日 | 昭和39年4月2日~昭和41年4月1日 | 65歳(基礎年金) | 64歳 |
昭和36年4月2日以降 | 昭和41年4月2日以降 | 65歳(基礎年金) | 65歳 |
【女性】
女性 | 生年月日 |
支給開始年齢 (定額部分+報酬比例部分) |
昭和7年4月1日以前 | 55歳 | |
昭和7年4月2日~昭和9年4月1日 | 56歳 | |
昭和9年4月2日~昭和11年4月1日 | 57歳 | |
昭和11年4月2日~昭和13年4月1日 | 58歳 | |
昭和13年4月2日~昭和15年4月1日 | 59歳 | |
昭和15年4月2日~昭和21年4月1日 | 60歳 |
【坑内員・船員】
坑内員・船員 | 生年月日 | 支給開始年齢(定額部分+報酬比例部分) |
昭和21年4月1日以前 | 55歳 | |
昭和21年4月2日~昭和23年4月1日 | 56歳 | |
昭和23年4月2日~昭和25年4月1日 | 57歳 | |
昭和25年4月2日~昭和27年4月1日 | 58歳 | |
昭和27年4月2日~昭和29年4月1日 | 59歳 |
<年金額>
定額部分+報酬比例部分+加給年金額
※報酬比例部分相当の老齢厚生年金には加給年金額は加算されない。
●定額部分
$$1676円\times\left(生年月日に応じて 1.875~1.000\right)\times\left(被保険者期間の月数\right)\times物価スライド率$$
●報酬比例部分
$$ (\left(平均標準報酬月額\right)\times\left(生年月日に応じて\frac{9.5}{1000}~\frac{7.125}{1000}\right)\times\left(平成15年3月以前の被保険者期間の月数\right)$$
$$+$$
$$ \left(平均標準報酬額\right)\times\left(生年月日に応じて\frac{7.308}{1000}~\frac{5.481}{1000}\right)\times\left(平成15年4月以降の被保険者期間の月数\right))$$
$$\times1.031\times物価スライド率$$
平均標準報酬月額とは被保険者であった期間の各月の標準報酬月額を最近の水準で再評価した平均額
●経過措置
報酬比例部分の給付率が5%引き下げられた結果、年金の額が改正前の計算方法で得た額よりも低くなる場合があります。その場合には、改正前の計算方法で得た額を支給します。(従前保障)
<改正前の計算>
$$ (\left(平均標準報酬月額\right)\times\left(生年月日に応じて\frac{10}{1000}~\frac{7.5}{1000}\right)\times\left(平成15年3月以前の被保険者期間の月数\right)$$
$$+$$
$$ \left(平均標準報酬額\right)\times\left(生年月日に応じて\frac{7.692}{1000}~\frac{5.769}{1000}\right)\times\left(平成15年4月以降の被保険者期間の月数\right))$$
$$\times1.031\times物価スライド率$$
<加給年金額>
配偶者:222,400円(H27年度)
1人目、2人目の子:各222,400円(H27年度)
3人目以降の子:各74,100円(H27年度)
●支給要件
厚生年金の被保険者期間が20年以上(中高齢の短縮措置あり)あって、生計を維持している
(1)65歳未満の配偶者(大正15年4月1日以前生まれの者を除く)
(2)18歳に達する日以降の最初の3月31日までの間にある子、又は20歳未満で障害等級1,2級の子
がある時に支給。
※昭和9年4月2日以降生まれの受給権者には、配偶者加給年金額に次の額が特別加算される。
受給権者の生年月日 | 特別加算額(H27年度) |
昭和9年4月2日~昭和15年4月1日 | 32,800円 |
昭和15年4月2日~昭和16年4月1日 | 65,600円 |
昭和16年4月2日~昭和17年4月1日 | 98,500円 |
昭和17年4月2日~昭和18年4月1日 | 131,300円 |
昭和18年4月2日以降 | 164,000円 |
<加給年金額の改定と支給停止>
●受給権者がその権利を取得した当時胎児であった子が産まれたときにはその翌月から加給年金額は加算される。
●対象となる配偶者や子が次のいずれかに該当する場合は、加給年金の計算の基礎から除外される。
- 死亡したとき
- 生計維持がやんだとき
- 配偶者が離婚したとき
- 配偶者が65歳に達したとき
- 子が配偶者以外の者の養子となったとき
- 養子が離縁したとき
- 子が婚姻したとき
- 障害等級1級又は2級に該当する障害の状態にない子については、18歳に達した日以後の最初の3月31が終了したとき。
- 障害等級1級又は2級に該当する障害の状態にない子(18歳に達した日以後の最初の3月31までの間にある子を除く。)について、その事情がやむか20歳になったとき。
●加算対象配偶者が老齢厚生年金、障害厚生年金、障害基礎年金又は障害共済年金その他、老齢もしくは退職又は障害を支給事由とする政令で定める年金給付が受けられる間は、配偶者の加給年金額は支給停止される。
<失業給付との支給調整>
平成10年4月1日から、60歳代前半の老齢厚生年金と雇用保険法の失業給付を同時に受けられる場合は、老齢厚生年金が支給停止される。
ただし、同日前に老齢厚生年金の受給権を取得した者については、併給調整をしない。
<高年齢雇用継続給付との支給調整>
平成10年4月1日から、60歳代前半の老齢厚生年金(同日前に老齢厚生年金の受給権を取得している場合を除く)と雇用保険法の高年齢雇用継続給付を同時に受けられる場合は、在職老齢年金の調整がされ、更に老齢厚生年金の支給が調整される。
※在職老齢年金とは、60歳から65歳までの間働いている人(被保険者)に賃金の額に応じて本来の60歳代前半の老齢厚生年金の額の一部をカットして支給する制度。
<失権>
受給権者が
(1)死亡
(2)65歳に達したとき
受給権は消滅する。
本ページの記述は平成14年(2002年)時点の法律に基いています。現在の法律とは異なる場合があります。