1.給付抑制
(1) 厚生年金保険の報酬比例部分を5%減額(実施時期:2000年4月)
4月からの新規受給者については厚生年金保険の報酬比例部分の額は、年金額の計算に使用される給付乗率を変更することによって5%引き下げられることになりました。
しかし、3月以前に受給権を取得していた人との公平を保つために、従来の年金額を物価スライドした額を保障する経過措置がとられるため、実際に5%の削減をされるのは2004年度からになりそうです。
<厚生年金保険の報酬比例部分の年金額>
現行法の給付乗率:1000分の7.5→改革案の給付乗率:1000分の7.125
(2) 65歳以上の賃金スライドの凍結(実施時期:2000年4月)
国民年金と厚生年金保険の両方について、5年に一度行われる財政再計算時に現役世代の賃金の伸びに応じて年金額が改定されます。この現役世代の賃金の伸びに応じた引き上げ(引き下げ)を賃金スライドといいます。
従来は、新規受給権者の年金額だけでなく、すでに年金を受給している人の年金額についても賃金スライドによる改定を行ってきました。しかし、4月からは、65歳以後の既に裁定済みの年金については、賃金スライドを行わず物価スライドのみが加算されることとなりました。
ただし、賃金スライドを行ったとした場合の年金額との金額差が大きいときには、賃金スライド行うとしています。
(3) 在職老齢年金制度の65歳~69歳までの適用拡大(実施時期:2002年4月)
従来、65歳前の老齢厚生年金について、標準報酬月額に応じた年金額の全額または一部の支給停止が行われてきました。
2002年4月以降は従来の支給停止期間に加えて65歳~69歳までの間も標準報酬に応じた支給停止が行われます。また、この制度の導入に伴い老齢厚生年金の繰り下げ支給制度は廃止されます。
なお、2002年4月前に65歳に達している人は、支給停止されません。
65歳前の支給停止 | 65歳~69歳の支給停止 |
厚生年金保険の被保険者である場合 在職中は原則として年金額の2割を支給停止。標準報酬月額と基本月額(年金月額の80%の額)の合計額が22万円を超える場合 2割に加えて標準報酬月額に応じて支給停止額が増える。 給与収入が月額37万円以上になる場合 |
標準報酬月額と老齢厚生年金の月額の合計額が37万円に達するまでは全額支給。37万円を超える場合 標準報酬月額の増加に応じて支給停止額が増える。 |
(4) 厚生年金保険の報酬比例部分の支給開始年齢を65歳に段階的引き上げ(実施時期:2013年度)
平成6年の改正による定額部部の支給開始年齢の引き上げに続いて、報酬比例部分の支給開始年齢も65歳に引き上げられることになりました。
男性は2013年度から2025年度にかけて、女性は2018年から2030年にかけて、3年ことに1歳づつ引き上げが行われます。
これに伴い、新たな減額率による老齢厚生年金の繰り上げ支給制度が創設される予定です。
生年月日 | 支給開始年齢 | ||
男性 | 女性 | 定額部分 | 報酬比例部分 |
昭和16年4月1日以前 | 昭和21年4月1日以前 | 60歳 | 60歳 |
昭和16年4月2日~昭和18年4月1日 | 昭和21年4月2日~昭和23年4月1日 | 61歳 | 60歳 |
昭和18年4月2日~昭和20年4月1日 | 昭和23年4月2日~昭和25年4月1日 | 62歳 | 60歳 |
昭和20年4月2日~昭和22年4月1日 | 昭和25年4月2日~昭和27年4月1日 | 63歳 | 60歳 |
昭和22年4月2日~昭和24年4月1日 | 昭和27年4月2日~昭和29年4月1日 | 64歳 | 60歳 |
昭和24年4月2日~昭和28年4月1日 | 昭和29年4月2日~昭和33年4月1日 | 65歳(基礎年金) | 60歳 |
昭和28年4月2日~昭和30年4月1日 | 昭和33年4月2日~昭和35年4月1日 | 65歳(基礎年金) | 61歳 |
昭和30年4月2日~昭和32年4月2日 | 昭和35年4月2日~昭和37年4月1日 | 65歳(基礎年金) | 62歳 |
昭和32年4月2日~昭和34年4月1日 | 昭和37年4月2日~昭和39年4月1日 | 65歳(基礎年金) | 63歳 |
昭和34年4月2日~昭和36年4月1日 | 昭和39年4月2日~昭和41年4月1日 | 65歳(基礎年金) | 64歳 |
昭和36年4月2日以降 | 昭和41年4月2日以降 | 65歳(基礎年金) | 65歳 |